この記事でわかること
アイブロウデザインや独自の施術名が、法的にどこまで保護されるかの正確な境界線
技術をメソッド化し、スクール展開する際に必須となる「権利防衛」の具体的なノウハウ
他店とのトラブルを未然に防ぎ、唯一無二のサロンブランドを確立するための解決策
日々サロンでお客様と向き合い、試行錯誤の末に生み出したオリジナルのアイブロウデザインや施術メニュー。「もし、他のサロンにそのまま真似されてしまったらどうしよう」と不安を感じたことはありませんか?美容業界、特にアイブロウやまつ毛パーマの分野では、新しい技術や名称がSNSを通じてあっという間に拡散されるため、自分のアイデアやブランドを守るための知識が欠かせない要素です。
職人としての技術を磨くことはもちろん素晴らしいことです。しかし、それらを事業としてスケールさせ、将来的にスクール開講やオリジナル商材の販売を見据えるのであれば、避けて通れないのが「知的財産権(著作権や商標権など)」という法律の壁です。知らなかったがゆえに、ある日突然名称を変更せざるを得なくなったり、丹精込めて作った教材が無断転載されたりするケースは後を絶ちません。
これから、アイブロウリストがご自身の身とブランドを守るために知っておくべき、著作権と商標の実務的な知識を、具体例を交えながら分かりやすく紐解いていきます。専門的な法律用語も、サロンワークに直結する形でお伝えしますので、ぜひ最後まで目を通し、確固たるブランド構築の第一歩を踏み出してください。
1. オリジナルの施術名やデザインは守れるか
アイブロウデザインは著作物として認められる?
「私が考案したこの眉の黄金比デザイン、著作権で守れないでしょうか?」——美容サロンのオーナー様から、非常によくいただくご相談です。結論から申し上げますと、人間の顔に施すメイクやアイブロウデザインそのものは、原則として著作物として認められにくいのが現在の法的な解釈です。
著作権法が保護するのは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義されています。アイブロウ施術は、お客様の骨格や筋肉の動きに合わせて美しさを引き出す「実用的な技術」や「アイデア」の側面に分類されるため、美術品のような著作物とは見なされにくいのです。
- 保護されにくいもの: お客様の顔に施したメイクアップの結果、眉のスタイリング技術そのもの。
- 保護される可能性が高いもの: 紙やタブレットに描いた独自の「デザイン画(フェイスチャート)」や、手順をまとめた「テキスト・イラスト」。
つまり、技術そのものを独占することは難しくとも、それを表現した「ツール」は著作権で守られるという境界線を理解しておくことが大切です。
施術名の独自性を守るための壁
デザインそのものの独占が難しい一方で、「○○ブロウリフト」といった独自に名付けた施術名はどうでしょうか。実は、短い単語の組み合わせやキャッチコピーは、著作権の対象にはなりません。「驚くほどの効果を発揮する」ような素晴らしいネーミングであっても、著作権では他者の模倣を防ぐことができないのです。
ここで登場するのが「商標権」です。商標権を取得することで初めて、そのネーミングを法的に独占し、他店が無断で使用した際に差し止めを請求する強力な権利を得ることができます。
関連記事:究極のアイブロウ資格とは?技術・知識・人間力を備えたプロの頂点
2. 商標登録の基本とメリット
そもそも商標登録とは?アイブロウ業界での意味
サロン業界において、「名前」は信用そのものです。お客様は、「あのサロンのあのメニューだから」という理由で足を運んでくださいます。商標登録とは、自社の商品やサービスに付ける「マーク」や「ネーミング」を特許庁に登録し、国から独占使用のお墨付きをもらう制度です。
アイブロウ業界はトレンドの移り変わりが激しく、新しいメニュー名が次々と誕生します。もしあなたが苦労して名付け、地域で人気を集め始めたメニュー名があったとします。しかし、悪意のあるなしに関わらず、別のサロンが同じ名前を使い始めてしまったら、お客様は混乱してしまいますよね。商標登録は、そうした「名前の乗り合い」を防ぎ、お客様の信頼を自サロンに蓄積するための強力な盾となります。
登録することで得られる3つの大きなメリット
商標登録の手続きには費用と時間がかかりますが、それ以上の大きなリターンが存在します。
- 独占的な使用権の確保: 日本全国で、その指定した分野(美容サロンなど)において、あなただけがその名前を使えるようになります。他店の無断使用に対しては、法的な警告を出すことが可能です。
- ブランド価値の向上と信頼: 「商標登録済(®マーク)」の表示は、お客様や取引先に対して「知的財産をしっかり管理している信頼できるサロン・企業」という印象を与えます。
- 将来のフランチャイズ展開の布石: 自分の技術を認定サロンに教え、名前を貸し出す(ライセンス契約)ビジネスを展開する際、商標権がなければ成立しません。
商標出願から登録までの流れと注意点
「すぐにでも登録したい」と思っても、今日申請して明日認められるものではありません。通常、出願から審査結果が出るまでには数ヶ月から1年程度の期間を要します。また、すでに他人が似たような名前を登録している場合は、残念ながら審査で弾かれてしまいます。
だからこそ、新しいメニューやブランドを立ち上げる際は、看板を作る前に「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」などで事前検索を行うことが、大きなトラブルを回避する鉄則となります。

3. 自分の技術をメソッド化し、講座を開く
スクール事業で直面する「技術の盗用」リスク
サロンワークが軌道に乗り、次なるステップとして「同業者向けの技術スクール」を開講する方は非常に多いです。ご自身の培ってきたアイブロウ技術を後進に伝えるのは素晴らしい取り組みですが、ここに大きな落とし穴が潜んでいます。
先日、独自の眉毛パーマ技術のスクールを開講した方から、「卒業生が勝手に私のテキストの内容を使い、私の承諾なしに別のスクールを開講してしまった」という痛ましいご相談を受けました。技術そのものは著作権で保護されないため、「教えた技術をどう使うか」を事前に縛っておかなければ、合法的に競合を育ててしまう結果になりかねません。
メソッドを保護するための契約書とルールの作り方
こうした事態を防ぐための唯一の防衛策が、「受講契約書(利用規約)」の締結です。法律が自動的に守ってくれない領域だからこそ、当事者同士の「約束(契約)」で縛る必要があります。
- 秘密保持義務(NDA): 講座で配布した資料や、口頭で伝えた独自のノウハウを、第三者に漏洩しないことを約束させます。
- 競業避止義務: 「受講後一定期間は、同じようなスクール事業を立ち上げない」といった制限を設けます(※過度な制限は無効になる場合があるため注意が必要です)。
- 認定制度の導入: 商標登録した名称を「認定サロンのみが名乗れる」というルールにし、ブランドの質を担保します。
口約束やLINEだけのやり取りではなく、法的に効力のある書面を交わすことで、受講生側にも「価値あるメソッドを適正に扱う」という意識が芽生えます。これは単なる囲い込みではなく、真面目にルールを守ってくれる他の受講生の権利を守るためにも欠かせない要素です。
スクール開講前のリスク対策チェックリスト
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受講前に必ず法的に有効な受講契約書にサインをもらっているか - ●
教えた技術を「自サロンの施術に使うのはOK」「人に教えるのはNG」など使用範囲を明確に定義しているか - ●
スクール名や認定資格名について、事前に商標登録の申請を済ませているか
4. 教材の著作権と引用のルール
オリジナルテキストや動画コンテンツの法的保護
スクールやオンラインサロンの運営において、最も価値のある資産となるのが「オリジナル教材」です。前述の通り、技術そのものに著作権は発生しにくいですが、それを言語化し、体系的にまとめた「テキスト・PDF・スライド資料・実技解説動画」は、立派な著作物として法律で保護されます。
もし、あなたの教材の文章を丸ごとコピーされたり、動画を無断でダウンロードされて別サイトで転売されたりした場合は、明確な著作権侵害(複製権・公衆送信権の侵害など)として、法的措置をとることが可能です。抑止力を高めるためにも、教材の全ページに「© 2026 Your Salon Name. All Rights Reserved.」のようなコピーライト表記を入れることや、「無断転載・複製を固く禁じます」といった警告文を明記しておくことが推奨されます。
正しい引用と無断転載の境界線
逆に、自分が教材を作る側になった際の注意点もお伝えします。他人の書籍やネット上の記事、SNSの投稿を教材に組み込む場合、「引用」のルールを厳格に守らなければ、今度は自分が著作権侵害者になってしまいます。
「ちょっと参考にするだけだから」「出典元のURLを書いておけば大丈夫」という軽い認識は非常に危険です。法律上、合法的な「引用」と認められるためには、いくつかの厳しい条件をクリアする必要があります。
- 主従関係の明確化: 自分のオリジナルの文章が「主」であり、他人の文章はあくまで補足説明などの「従」であること。他人の文章でページの大半が埋まっているのはNGです。
- 明瞭な区別: どこからどこまでが自分の文章で、どこが引用部分なのか、カギ括弧や背景色などで明確に区別すること。
- 出所の明示: 著者名、書籍名、Webサイト名とURLなど、どこから持ってきた情報なのかを正確に記載すること。
関連記事はこちら:【東京 vs 大阪】人気アイブロウスクール徹底比較|資格・学費・校風の違い
5. 他のサロンのデザインを模倣するリスク
SNSで見つけたデザインをそのまま使う危険性
InstagramやTikTokを開けば、国内外の素晴らしいアイブロウデザインが溢れています。「この眉の形、明日のお客様に提案してみよう」とインスピレーションを受けるのは、技術者として自然なことです。しかし、SNSで見つけた他店の症例写真を、あたかも自サロンの施術例のように無断で転載して集客に使う行為は、著作権(写真の著作物)の侵害にあたるだけでなく、景品表示法などの観点からも大きな問題となります。
さらに、写真の転載ではなく「デザインそのもの」を模倣するケースはどうでしょうか。先ほど「デザイン自体は著作物になりにくい」と解説しましたが、だからといって他店が緻密に計算してブランディングしている特定の特徴的なデザインを、そっくりそのままコピーし、「自店オリジナル」と謳って宣伝する行為は、モラルに反するだけでなく、「不正競争防止法」に抵触する恐れもゼロではありません。
トラブルを未然に防ぐためのチェックポイント
アイブロウリストという職業は、お客様の顔という「キャンバス」に触れる非常にデリケートな仕事です。技術力はもちろんですが、同業者へのリスペクトを欠いた行動は、結果的に自サロンの評判を落とすことにつながります。
- 他者のコンテンツに対する意識: 「ネット上にある画像はフリー素材ではない」という大前提をスタッフ全員に徹底させること。
- インスピレーションとパクリの違い: トレンドを取り入れることと、他店の看板メニューを丸ごとコピーすることは違います。自サロンの客層に合わせた「独自のアレンジ(付加価値)」を加える努力が必要です。
同業者から「あのサロンはうちの真似ばかりしている」とSNSで告発されるような事態になれば、回復不可能なブランドダメージを負うことになります。オリジナルを生み出す苦労を知っているプロだからこそ、他者の権利や努力の結晶を尊重する姿勢が求められます。
情報発信におけるコンプライアンスの確認
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SNSやHPに掲載している写真は、すべて自サロンで撮影(または正規購入)したものか - ●
他店のメニュー名と完全に一致する名称を意図的に使用していないか - ●
お客様に対して「うちが元祖です」といった事実と異なる誤信を与える表現をしていないか

6. 弁理士などの専門家への相談
専門家に頼るべきタイミングとは?
「商標登録は自分でもできると聞いたけれど、本当に専門家に頼む必要はあるのでしょうか?」——先日、新しくアイブロウスクールを立ち上げる予定のお客様から、こんな質問を受けました。
結論からお伝えしますと、特許庁への商標出願自体は個人でも可能です。しかし、本格的にブランドを構築し、将来的なスクール展開やフランチャイズ化を見据えているのであれば、最初から弁理士などの専門家に依頼することを強くおすすめします。
私自身、以前別の事業を立ち上げた際に「少しでも費用を浮かせよう」と自力で商標を出願し、失敗した経験があるのですが、美容業界のサービス区分を誤って指定してしまい、特許庁から「拒絶理由通知」を受けてしまいました。結果的に、修正のために専門家へ泣きつくことになり、最初から依頼するよりも多くの時間と無駄な費用を費やすことになったのです。
弁理士選びの失敗しないポイント
弁理士と一口に言っても、得意とする分野は様々です。IT系や機械特許に強い先生もいれば、美容やファッション関連の商標に明るい先生もいます。アイブロウサロンのメニュー名やスクールの名称を守るためには、美容業界の実情を理解している専門家を選ぶことが欠かせない要素です。
- 美容業界の実績の有無: サロンの施術メニュー(第44類)と、スクールの教育サービス(第41類)、オリジナルコスメの販売(第3類)など、どの区分で権利を取得すべきか、ビジネスモデルに合わせて的確にアドバイスをくれるかを確認しましょう。
- コミュニケーションの取りやすさ: 法律の専門用語ばかりを使うのではなく、「サロンの現場ではどう影響するか」を分かりやすく噛み砕いて説明してくれる担当者を選ぶことが大切です。
相談前に準備しておくべき資料
専門家への初回相談をスムーズかつ有意義なものにするために、事前の準備が驚くほどの効果を発揮します。ただ「名前を登録したい」と伝えるだけでなく、今後のビジネスの展望を共有することで、より強固な権利の取得に繋がります。
参考ページ:人気YouTuberの眉メイク術 vs 専門資格で学ぶ理論|あなたの眉はどちらを信じる?
7. アイブロウリストが知るべき知的財産権
著作権・商標権だけじゃない!意匠権の基礎
ここまで著作権と商標を中心にお話ししてきましたが、アイブロウリストが知っておくべき「知的財産権」は他にも存在します。特に、サロンオリジナルの商材開発に乗り出す際に重要となるのが「意匠権(いしょうけん)」です。
例えば、あなたが何百人ものお客様の眉を施術する中で、「もっと毛を根元から捉えやすい、独自のカーブを持ったツイーザー(毛抜き)」を開発したとします。この「機能美を伴った全く新しい形状」は、意匠権として特許庁に登録することで、他社による模倣品(コピー商品)の製造・販売を差し止めることが可能です。オリジナルコスメの特殊なボトルデザインなども、この意匠権の保護対象になり得ます。
顧客リストと営業秘密(不正競争防止法)
知的財産と聞くと「特許」や「商標」ばかりを想像しがちですが、サロン経営において最も身近で、かつ流出のリスクが高いのが「顧客リスト」や「独自の施術マニュアル」です。
少し残念な話になりますが、「退職したスタッフが、当サロンの顧客リストと施術カルテを無断で持ち出し、独立先でそのまま営業をかけている」というトラブルは、美容業界において後を絶ちません。このような事態を防ぐための法律が「不正競争防止法」です。
- 営業秘密として認められる条件: 単なる名簿ではなく、「パスワードをかけて一部のスタッフしか見られないように管理している(秘密管理性)」「事業にとって有用な情報である(有用性)」「世間に知られていない(非公知性)」という3つの要件を満たす必要があります。
SNS時代の肖像権とパブリシティ権
さらに、日々のInstagramやTikTokでの発信において避けて通れないのが「肖像権」の問題です。お客様のビフォーアフター写真を掲載する際、目元だけであっても、個人が特定できる状態であれば無断掲載はNGです。必ず「SNSやホームページへの掲載許諾」を書面や電子カルテで得ておく必要があります。
サロンにおける情報管理チェックリスト
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顧客データやカルテ情報にはアクセス制限(パスワード等)を設けているか - ●
スタッフの入社時および退職時に秘密保持誓約書(NDA)を交わしているか - ●
SNSへ症例写真を掲載する際、お客様から明確な同意(サインやチェック)を得ているか
参考:資格を取っても自信がない…アイブロウリストが陥るインポスター症候群の克服法
8. 資格取得後の次のステップとしてのブランド構築
技術の証明から「ブランドの保護」へ
アイブロウリストとして確かな技術を身につけ、各種の認定資格を取得することは、プロフェッショナルとしての大きな自信に繋がります。しかし、資格取得はゴールではなく、あなた自身のサロンブランドを構築するためのスタートラインに過ぎません。
「○○協会の認定サロン」という肩書きは集客の助けになりますが、それだけに頼っていては、近隣に同じ資格を持つ競合サロンができた瞬間に価格競争に巻き込まれてしまいます。だからこそ、「あなた自身のサロン名」や「あなたが独自に名付けたメニュー」をブランドとして育て、法的に保護していくフェーズへ移行することが不可欠なのです。
フランチャイズ展開を見据えた権利化
サロンの予約が数ヶ月待ちとなり、「私の技術を学びたい」という声が同業者から集まるようになった時、事業は新しい局面を迎えます。それが、スクール事業やフランチャイズ(FC)展開です。
ここで重要になるのが、あなたのビジネスモデルが「他人に使わせる(ライセンスする)価値のあるパッケージ」になっているかどうかです。商標権を取得していないブランド名は、他人に貸し出す(使用料をもらう)ことができません。権利の所在が曖昧なまま「のれん分け」を行ってしまうと、後々「誰が本当の創設者か」で揉める原因となります。
- ロゴマークの商標登録: サロンの看板や認定証に記載するロゴを登録し、認定を受けたサロンだけがそのロゴを掲げられるようにすることで、ブランドの希少価値を高めます。
- テキストの著作権明記: 講習で使用する独自のマニュアルには、必ず自社に著作権があることを明記し、複製や二次配布を固く禁じる文言を記載します。
トラブルを未然に防ぐ利用規約の整備
素晴らしい技術を教える一方で、ブランドの質を維持するためのルール作りも並行して行わなければなりません。

9. あなたの技術に法的な価値を与える
「無形の技術」を「有形の資産」に変える
アイブロウリストの皆様が日々磨き続けている「技術」は、目に見えず、形として残らない「無形」のものです。どれだけ卓越した手技を持っていても、そのままではあなた自身の属人的なスキルで終わってしまいます。
しかし、その技術に独自の名前を与え、理論に基づいたマニュアル(テキスト)として体系化し、それらを商標権や著作権によって法的に保護することで、初めてビジネス上の「有形の資産(知的財産)」へと姿を変えるのです。
資産となれば、それは他者に譲渡したり、貸し出したりすることが可能になります。「自分が現場に立ち続けなければ売上が立たない」という労働集約型のモデルから抜け出し、ブランド自体が利益を生み出す仕組みを作ることができるのが、権利化の最大の醍醐味と言えます。
権利化がもたらす提携や協業のチャンス
権利関係がクリアに整備されたブランドは、外部からの信用度も格段に跳ね上がります。例えば、化粧品メーカーから「あなたのサロン独自のアイブロウメソッドに合わせた、専用のアイブロウパウダーを共同開発しませんか?」とコラボレーションの打診があったとします。
この時、あなたの施術名が商標登録されていれば、「商品のパッケージに登録商標を使用するライセンス契約」として、非常にスムーズに、かつ有利な条件で交渉を進めることができます。相手企業にとっても、権利が曖昧な個人サロンと組むより、法的に守られたブランドと組む方がリスクが低いため、協業のチャンスが広がるのです。
自分の身を守るだけでなく、業界を健全にする
「なんだか法律でガチガチに固めるのは、同業者に対して冷たい感じがする」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、決してそんなことはありません。
- モラルの維持: 自分の権利を主張することは、「他人の権利も尊重する」という姿勢の表れです。
- 安易な模倣の抑止: 業界全体で知的財産への意識が高まれば、安易なパクリや粗悪なコピーメニューが減り、真面目に技術開発をしている技術者が正当に評価される市場になります。
技術を資産に変える3つのステップ
- ●
感覚で行っている施術を言語化し、体系的なテキスト(著作物)としてまとめる - ●
そのメソッドに対して、他にはない独自のネーミングを考案する - ●
考案したネーミングについて商標出願を行い、法的な独占権を取得する
10. アイブロウの資格と合わせて学びたい法律
薬機法(旧薬事法)と景品表示法の基本
アイブロウリストがサロンワークを安全に行うためには、知的財産権に加えて、広告表現に関わる法律の知識も欠かせません。先日、熱心なオーナー様から「まつ毛美容液やアイブロウコスメの販売促進で、どこまで効果を謳っていいのか悩んでいる」という相談を受けました。
ここで立ちはだかるのが「薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)」です。化粧品として分類される商材について、「細胞から生まれ変わる」「確実に毛が生える」といった医薬品のような効能効果を謳うことは固く禁じられています。また、「地域No.1の実績!」など、客観的な根拠のない誇大広告は「景品表示法」の優良誤認にあたるリスクがあります。
美容師法とアイブロウ施術の関わり
さらに根本的な部分として、「美容師法」の理解も避けては通れません。現在、日本において「ハサミやカミソリを使用して眉毛を整える行為」や「まつ毛パーマ、アイブロウパーマ(眉毛の毛流れを薬剤で変える施術)」を行うには、原則として国家資格である美容師免許が必須とされています。
民間団体の発行する「アイブロウ認定資格」は、確かな技術や知識を持つことの素晴らしい証明になりますが、国家資格の代わりにはなりません。もし無資格でこうした施術を提供してしまった場合、法律違反として重いペナルティが課されるだけでなく、お客様の信頼を根底から失うことになります。施術メニューを組み立てる際は、法的に許容される範囲(例えば、ワックス脱毛やメイクアップのみの範囲に留めるなど)を正確に把握しておく必要があります。
サロン経営に直結する消費者契約法
最後に見落としがちなのが、お客様との契約に関わる法律です。特に、高額なコース料金を一括で頂く場合や、スクールの受講料を前払いしていただく場合、「特定商取引法」や「消費者契約法」が適用されるケースがあります。
- キャンセルポリシーの明示: 「いかなる理由があっても返金しません」といった一方的に消費者に不利な条項は、法律上無効と判断されることがあります。
- クーリング・オフ制度の理解: 一定の条件を満たす長期コース(エステティック等)に該当する場合、お客様には無条件で解約できる権利があることを知っておかなければなりません。
法律と聞くと難しく感じてしまうかもしれませんが、これらはすべて「お客様を不利益から守るため」のルールです。これらを遵守する姿勢そのものが、サロンの品格を高め、長期的な繁栄に繋がる確かな土台となります。
独自のアイブロウ技術を法的資産に変え、ブランドを確固たるものにするために
アイブロウリストが自身の技術とブランドを守るための「知的財産権」や関連する法律の知識について、多角的な視点から解説してきました。
この記事で最もお伝えしたかったことは、「優れた技術や熱意だけでは、悪意ある模倣やトラブルから自分の身を守り切ることはできない」という事実です。デザインそのものを著作権で独占することは難しくとも、考え抜いた独自のネーミングを「商標」として登録し、メソッドを「テキスト」として著作物化することで、あなたの無形の技術はビジネス上の強力な資産へと変わります。また、スクールを展開する際には、契約書というルールを敷くことが、結果として受講生とブランドの質を守る盾となるのです。
法律は、知っている者の味方です。明日から実践できる確かな第一歩として、まずは特許庁のデータベース「J-PlatPat」で、現在使用しているサロン名やオリジナルメニュー名が他社に登録されていないか検索してみてください。そして、現在ホームページやSNSに掲載しているビフォーアフター写真やキャッチコピーが、権利侵害や誇大広告になっていないか、一度見直してみることをお勧めします。法的な基盤を整えることが、長く愛される唯一無二のサロンブランドを築くための確実な道筋となります。
アイブロウのデザイン著作権と商標に関するよくある質問
A. 施術の参考にすること自体は違法ではありませんが、画像を無断転載したり、「自店オリジナル」と偽って宣伝することはNGです。
アイブロウの仕上がり(デザイン)そのものは著作物として保護されにくいですが、他店が撮影した写真には著作権があります。インスピレーションを得るにとどめ、発信は必ず自店で行った施術写真を使用してください。
A. 弁理士に依頼する場合、出願から登録まで総額10〜15万円程度、期間は約半年〜1年が目安です。
費用は指定するビジネスの区分(美容、教育など)の数によって変動します。特許庁の審査状況や、早期審査制度を利用するかどうかによって期間は変わるため、事前に専門家へ見積もりを依頼すると安心です。
A. テキストに著作権表記(©マーク等)を明記し、受講前に無断複製・転載を禁ずる契約書を必ず交わしてください。
法律上、テキストを作成した時点で著作権は発生していますが、ルールを明文化することで抑止力になります。「違反した場合は違約金を請求する」などの具体的な条項を設けることが効果的です。
A. 日本国内でまだ誰も登録していなければ可能ですが、すでに一般名詞化している場合は審査で拒絶される可能性があります。
他国で有名な名称であっても、日本の特許庁のデータベースに登録がなければ早い者勝ちとなるのが原則です。ただし、業界内で誰でも使う一般的な用語と判断された場合は独占できません。
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