「毎日なんとなく眉メイクをしているけど、これで本当に合っているのかな?」
「頑張って描いても、夕方には眉尻が消えてしまう…」
「パウダーとペンシル、どっちが先なの?と今さら聞けない…」
眉は顔の印象を8割決めると言われるほど重要なパーツ。それなのに、そのメイクプロセスは意外と自己流になりがちで、多くの人が小さな疑問や悩みを抱えています。私自身、長年メイクアップアーティストとしてお客様の眉に触れてきましたが、キャリアの初期には、ただ形を整えることに必死で、正しい「順番」がもたらす魔法のような効果を見過ごしていた時期がありました。
しかし、断言します。美しい眉は、正しいプロセス、つまり「順番」を知ることから始まります。なぜなら、各ステップには明確な役割があり、その順番を守ることで、一つひとつのアイテムが持つ効果を最大限に引き出し、崩れにくさと美しさを両立させることができるからです。
これからお話しするのは、単なるメイクの教科書ではありません。私が数え切れないほどの試行錯誤と、現場での経験を通じて確立した、美眉を叶えるための最も確実なプロセスです。各ステップの「なぜそうするのか?」という理由はもちろん、読者の皆様が陥りがちな失敗例や、プロならではのちょっとしたコツまで、余すところなく深く掘り下げて解説していきます。ぜひご自身の毎日のメイクと照らし合わせながら、読み進めてみてください。
1. メイク前のスキンケアと眉周りの油分オフ
美しい眉メイクの土台は、描く前の「準備」で決まります。まるで、最高級の絵の具を用意しても、キャンバスが油で汚れていては美しい絵が描けないのと同じです。眉周りの肌コンディションを最適化するこのステップは、絶対に省略できません。特に重要なのが、スキンケアの油分や皮脂を適切にオフすることです。
朝のスキンケアで使う乳液やクリーム、日焼け止めには、保湿成分として油分が含まれています。これらが眉毛やその周りの皮膚に過剰に残っていると、どうなるでしょうか。
・ペンシルが滑ってしまい、キレイな線が描けない
・パウダーがダマになり、ムラになる
・皮脂と混ざり合い、時間と共にメイクが溶けて消えてしまう
・アイブロウマスカラが均一につかず、ヨレの原因になる
私のもとに訪れるお客様の中にも、「どうしても昼過ぎには眉尻が消えてしまう」という悩みを抱えた方がいらっしゃいました。詳しくお話を伺うと、原因はメイクの直前に塗っていた、こっくりとしたテクスチャーのアイクリームでした。保湿は非常に大切ですが、メイクの「のり」や「もち」を妨げる油分は、描く前には大敵なのです。特に夏場、汗や皮脂の分泌が増える季節には、この下準備が眉の寿命を決めると言っても過言ではありません。
では、具体的にどうすれば良いのでしょうか。正しい準備のステップは以下の通りです。
1. スキンケアをしっかり馴染ませる
化粧水や乳液を塗ったら、すぐにメイクを始めるのではなく、最低でも3〜5分は時間を置きましょう。手のひらで優しくハンドプレスをして、肌に成分がしっかりと浸透するのを待つことが重要です。肌表面がベタつかず、内側から潤っている状態が理想です。スキンケア製品を選ぶ際も、朝は少し軽めのジェル状の保湿剤など、油分の少ないものを選ぶとメイクの邪魔をしにくくなります。
2. 眉周りをティッシュオフ
メイクを始める直前に、何もついていないティッシュを二つ折りにし、眉の上を優しく押さえて余分な油分を吸い取ります。この時、ゴシゴシ擦ってしまうと、必要な潤いまで奪い、肌を傷つける原因になるので注意が必要です。あくまで「押さえる」ように、スタンプを押す感覚で行ってください。
3. フェイスパウダーでサラサラに
さらに完璧を期すなら、ルースタイプ(粉状)のフェイスパウダーをブラシやパフに取り、眉とその周辺を軽く押さえておきましょう。粒子が細かいパウダーが、見えない皮脂や油分を吸着し、肌表面をサラサラのマットな状態にしてくれます。こうすることで、この後のアイブロウペンシルやパウダーがしっかりと密着する、最高のキャンバスが完成します。
このひと手間をかけるだけで、アイブロウメイクの描きやすさと持続性が劇的に向上します。まるで眉専用の化粧下地を塗ったかのような効果が得られるのです。ぜひ、明日からの習慣に取り入れてみてください。
2. 眉メイクはベースメイクのどの段階がベスト?
「眉って、ファンデーションの前?後?」これは、メイクレッスンでも非常によくいただく質問の一つであり、実はプロの間でもスタイルが分かれるポイントです。しかし、多くの方にとっての「正解」は存在します。結論から言うと、一般的には「リキッドやクリームタイプのファンデーションを塗った後、フェイスパウダーを乗せる前」が最もおすすめです。
これには明確な理由があります。それぞれのタイミングのメリットとデメリットを深く理解することで、なぜこの順番がベストなのかが腑に落ちるはずです。
●ファンデーションの「前」に描く場合
・メリット:素肌の状態に描くため、眉の輪郭がぼやけず、産毛なども処理しやすい。アートメイクのように、ごく自然な眉を演出したい場合には有効なテクニックです。
・デメリット:後から塗るファンデーションで、せっかく描いた眉の輪郭や眉尻が消えてしまったり、色が混ざって濁ってしまったりするリスクが非常に高い。これを避けるには、眉周りを避けてファンデーションを塗るという高度な技術が必要になり、初心者には向きません。
●フェイスパウダーの「後」に描く場合
・メリット:ベースメイクが完全に完成しているので、メイク全体のバランスを見ながら描ける。肌がサラサラなので、パウダータイプのアイブロウは乗せやすい。
・デメリット:サラサラのパウダーの上からだと、ペンシルの種類によっては油分が弾かれて色が乗りにくく、滑ってしまうことがある。特に硬めのペンシルだと、発色させるために何度も往復する必要があり、肌への負担になることも。
私自身、キャリアの初期には様々な順番を試しました。パウダーの後に描いていた時期には、ペンシルが滑ってしまい、お客様の肌の上で何度も描き直した結果、眉周りを赤くしてしまった苦い経験があります。
これらの点を踏まえて、私がベストと考えるのが「リキッド・クリームファンデーションの後、フェイスパウダーの前」というタイミングなのです。
なぜなら、リキッドファンデーションなどが肌に適度な潤いと密着感を与えている状態なので、アイブロウペンシルが滑らず、軽い力でしっかりと発色します。いわば、肌というキャンバスに、ペンシルの顔料がピタッと定着してくれる絶好のタイミング。
そして、眉を描き終えた後に、眉周りを含めて顔全体にフェイスパウダーを乗せることで、描いた眉を上から薄いヴェールでコーティングし、皮脂や汗による崩れを長時間防ぐことができます。この順番こそが、美しさと機能性を両立させる、最も合理的で失敗の少ないプロセスなのです。
3. スクリューブラシでの毛流れの整理
眉メイクのプロセスにおいて、多くの人がその真の重要性を見過ごしているアイテム。それが「スクリューブラシ」です。これを単なる「眉をとかすもの」と考えているなら、それは高級な万年筆をただの棒として使っているようなものです。このステップは、眉メイクの設計図を描く前の、最も重要な「現状分析」と「土地開発」の役割を果たします。
スクリューブラシで毛流れを整えることには、主に3つの目的があります。
1. 眉の本来の形を知る(現状分析)
寝癖がついていたり、毛がバラバラの方向を向いていたりすると、どこが眉の本当の輪郭なのかが分かりません。ブラシで毛流れを整えることで、あなたの眉が持つ本来の形やアーチ、毛の密度が姿を現します。これは、これから建てる家の設計図を描く前に、土地の正確な形や高低差を測量する作業に似ています。
2. 毛が足りない部分を可視化する(戦略立案)
毛流れを整えると、「眉頭の上部分が少し薄いな」「眉尻の毛が少ないな」といった、毛が密集している部分と、描き足すべき空白地帯が明確になります。闇雲に描き始めるのではなく、どこを重点的に補うべきか、どこは活かすべきか、メイクの戦略を立てることができます。
3. 毛に付着した余分な粉を取り除く(整地)
ベースメイクの際についたファンデーションやフェイスパウダーが眉毛に付着していると、この後のアイブロウマスカラなどがダマになる原因になります。スクリューブラシで梳かすことで、これらの余分な粉を払い落とし、クリーンな状態にリセットします。
私が現場で必ず実践している、ちょっとしたプロのテクニックがあります。それは、ただ一方に梳かすだけでなく、一度、眉全体の毛を「下向き」に梳かしてみることです。こうすると、眉の上側の輪郭(アウトライン)がくっきりと現れます。多くの人が、この上側のラインをどこに設定すべきか迷いますが、このひと手間で、自分の眉が持つ本来のアーチの頂点が一目瞭然になります。
その後、本来の毛流れに沿って、眉頭は下から上へ(生えグセをリフトアップさせるように)、中間から眉尻にかけては斜め下方向へと、優しく梳かし上げます。眉毛が濃くしっかりしている方は、少し硬めのブラシでしっかり毛流れを整えると良いでしょう。逆に眉毛が薄い、または短い方は、柔らかめのブラシで優しく梳かし、埋めるべき場所を正確に見つけることに集中します。
たったこれだけのことで、あなたの眉は最高のポテンシャルを発揮する準備が整うのです。地味なステップに見えますが、このひと手間が、この後の全ての工程の精度を格段に引き上げてくれます。
4. ペンシルでガイドラインと眉尻を描く
スクリューブラシで眉の現状分析が終わったら、いよいよ眉の「骨格」を作る作業に入ります。この重要な役割を担うのが「アイブロウペンシル」です。ここでの目的は、眉全体を塗りつぶすことではありません。眉の土台となるガイドラインを引き、最も重要でありながら消えやすい「眉尻」を確定させる、いわば建築における基礎工事です。
美しい眉の形を決めるには、基本的な「眉の黄金比」を知っておくと便利です。
・眉頭:小鼻の真上あたり
・眉山:黒目の外側のラインと、目尻を結んだ延長線上
・眉尻:小鼻と目尻を結んだ延長線上
この黄金比はあくまで目安ですが、自分の顔のどこにガイドラインを設定すべきかを知る上で、非常に役立ちます。ペンシルで描く際の最大のポイントは、「線を引く」のではなく「毛を1本1本植えるように描く」という意識を持つことです。特に、毛が足りない部分や、眉の下側のラインをくっきりとさせたい場所に、軽いタッチで描き足していきます。
ペンシルには繰り出し式や鉛筆タイプ、芯の硬さも様々ですが、初心者の方には芯が細く、硬すぎず柔らかすぎない繰り出し式のものがおすすめです。細かなラインも描きやすく、失敗が少ないでしょう。
そして、このステップで最も情熱を注ぐべきなのが「眉尻」です。眉尻がシャープに描かれているかどうかで、顔全体の洗練度が全く違ってきます。眉尻は、顔の他の部分よりも皮脂の分泌が多いこともあり、最も消えやすいパーツ。だからこそ、密着度の高いペンシルで、最初にしっかりと形を定めておく必要があるのです。
私がメイクをする際、お客様の眉で一番時間をかけて修正するのが、実はこの眉尻です。多くの方が、眉頭はしっかり描けているのに、眉尻が短かったり、ぼやけていたりする「麿眉(まろまゆ)」の状態になっています。眉尻をシュッとシャープに描くだけで、横顔まで美しく見え、驚くほどリフトアップした印象になります。
初心者が陥りがちなのが、左右の形が非対称になってしまうこと。これを防ぐコツは、片方の眉を一気に完成させないことです。まず右の眉尻を描いたら、すぐに左の眉尻を描く。次に右のアンダーライン、左のアンダーライン、というように、左右を少しずつ、交互に描いていくのです。そして、時々顔を鏡から離し、顔全体のバランスを確認する。この一手間が、左右対称の美しい眉への近道です。
ペンシルで眉の骨格と眉尻という、いわば建築における基礎と柱を築く。この工程がしっかりしていれば、この後のパウダーやマスカラが多少ラフでも、美しい眉の形は崩れません。

5. パウダーで眉全体の色を乗せる
ペンシルで眉の骨格が完成したら、次は「アイブロウパウダー」を使って、眉に自然な色彩と立体感を与えていきます。ペンシルが「線」で構造を作る役割だとしたら、パウダーは「面」で優しく色を乗せ、眉にふんわりとした柔らかさを与える役割を担います。これは、建築で言えば、骨組みに壁や内装を施していく工程です。
このステップの目的は、主に二つです。
1. 眉全体の色の濃淡を調整する
ペンシルで描いたガイドラインの内側や、毛と毛の間の隙間をパウダーで埋めていきます。これにより、眉全体に均一な色が乗り、自然な濃さが生まれます。ペンシルだけだと線が目立ってしまいがちな部分も、パウダーを重ねることで肌に馴染み、より自然な仕上がりになります。
2. 立体的なグラデーションを作る
これがプロと初心者の仕上がりを分ける、最も重要なポイントです。眉は、のっぺりと一色で塗りつぶしてしまうと、まるで海苔を貼り付けたような不自然な印象になってしまいます。自然な眉は、眉頭が最も薄く、眉の中間から眉尻にかけて徐々に濃くなるというグラデーションを持っています。
これを再現するために、アイブロウパウダーは2色以上が入ったパレットタイプを選ぶのがおすすめです。付属のブラシも便利ですが、より本格的な仕上がりを目指すなら、コシのある斜めカットの平筆と、少し柔らかめの丸筆の2本を使い分けると良いでしょう。
・淡い色(ライトカラー):丸筆に取り、眉頭にふんわりと乗せます。「ここに色を置く」というより、「空気を含ませる」ような感覚です。鼻筋に向かって軽くぼかすと、彫りの深い印象(ノーズシャドウ効果)も生まれます。
・中間色(ミディアムカラー):平筆に取り、眉の中央部分、最も毛が密集している部分に乗せます。
・濃い色(ダークカラー):平筆に少量取り、眉山から、ペンシルで描いた眉尻にかけて、輪郭をなぞるように乗せます。
パウダーをブラシに取ったら、一度ティッシュや手の甲でトントンと余分な粉を落とすのが、失敗しないための秘訣です。この一手間を省くと、粉がドバッとついてしまい、「描きました感」のある不自然な眉になってしまいます。もし濃くつきすぎたと感じたら、何もついていないスクリューブラシで優しく梳かせば、簡単にぼかすことができます。
ペンシルという骨格に、パウダーで血色と肉付けをしていくイメージ。この二つが組み合わさることで、まるで元からそうであったかのような、自然で美しい眉が完成に近づきます。
6. 眉マスカラで毛流れとカラーを整える
ペンシルとパウダーで眉の形と色が整いました。しかし、これらはあくまで「皮膚」に色を乗せた状態です。眉をより立体的に、そして洗練された印象に仕上げるための最後の仕上げが「アイブロウマスカラ」です。これを怠るのは、せっかく美しく塗装した壁に、質感を与える仕上げ材を塗らないようなもの。眉メイクの完成度を決定づける重要なステップです。
アイブロウマスカラには、主に3つの重要な役割があります。
1. 眉毛そのものの色を変える
多くの日本人の眉毛は黒々としており、そのままだと少し重く、強い印象を与えがちです。髪の色やアイメイクに合わせて眉毛の色を明るくすることで、一気に垢抜けた、柔らかな表情になります。黒髪の方でも、真っ黒なマスカラではなく、少しグレーがかったアッシュ系やダークブラウンを選ぶと、印象が格段に柔らかくなります。
2. 毛流れを固定し、立体感を出す
眉毛一本一本をコーティングし、スクリューブラシで整えた美しい毛流れを長時間キープします。特に、眉頭の毛を上向きに立ち上げるようにセットすることで、イキイキとした生命感が生まれます。眉毛が少ない方でも、マスカラを使うことで一本一本が太く見え、存在感を増す効果もあります。
3. 眉メイク全体の統一感を出す
ペンシルやパウダーで描いた部分と、自眉の毛の色がバラバラだと、どうしても「描いている」感じが拭えません。眉マスカラで全体のトーンを統一することで、メイク部分と自眉が一体化し、より「元から美しい眉」であるかのような自然な仕上がりになります。
アイブロウマスカラを塗る際には、一つだけ守ってほしい鉄則があります。それは、「いきなり毛流れに沿って塗らない」ということです。
【プロの塗り方】
1. 容器の口で、ブラシについた余分な液をしっかりと扱き落とす。液がボテッとついていると、ダマや失敗の原因になります。
2. まず、眉尻から眉頭に向かって、毛流れに逆らうようにブラシを動かす。こうすることで、眉毛の裏側までムラなく液を塗布できます。
3. 次に、眉頭から眉尻に向かって、本来の毛流れを整えるように優しく梳かす。眉頭は下から上へ、毛を立ち上げるように。
もし、誤って地肌に液がついてしまっても、焦って擦ってはいけません。触らずに完全に乾くのを待ち、乾いてからスクリューブラシで軽く擦ると、ポロポロと綺麗に取ることができます。このステップで、あなたの眉は平面的な「絵」から、立体的な「パーツ」へと進化を遂げます。
7. コンシーラーで輪郭を補正する
さて、ここからの2ステップは、いわば上級者向けのテクニック。しかし、これをマスターすれば、あなたの眉メイクは一気にプロの領域へと近づきます。その一つが、「コンシーラー」を使った輪郭の補正です。
この工程は、例えるなら完成した絵画を、最高の額縁に収めるようなもの。眉そのものを描くのではなく、眉の周りの肌を整えることで、眉の輪郭を際立たせ、驚くほどシャープで洗練された印象を作り出すことができます。
特に、眉の下側のラインにコンシーラーを使うと、以下のような絶大な効果があります。
・眉の輪郭がくっきりと際立ち、デザイン性が高まる
・眉山のアーチが美しく、立体的に見える
・産毛の剃り跡や、肌の赤みやくすみを瞬時にカバーできる
・眉全体がリフトアップし、目元が明るく見える
私がフォトシュートの現場でメイクをする際、モデルさんの眉を仕上げるのに、ペンシルで描く時間と同じくらい、このコンシーラーでの補正に時間をかけることもあります。なぜなら、強い照明の下では、肌のわずかな色ムラやラインの乱れが顕著に現れるからです。この一手間が、写真写りを劇的に変えるのです。
【使い方】
1. 硬めのテクスチャーのペンシルタイプか、高密着のクリームタイプのコンシーラーを選びます。色は、ご自身の肌色よりワントーン明るいものがおすすめです。肌の赤みが気になる場合は、少しイエロー系のコンシーラーを選ぶと綺麗にカバーできます。
2. 平筆タイプの小さなブラシにコンシーラーを少量取ります。直接ペンシルで描くと太くなりすぎるので、ブラシを使うのがプロのコツです。
3. 眉の下側のラインに沿って、スッと一本の線を引くようにコンシーラーを乗せます。この時、息を止めると手元が安定しやすくなります。
4. ブラシや指で、肌との境目を優しく叩き込むようにして馴染ませます。境目がくっきり残りすぎないように、丁寧にぼかすことが大切です。
この時、コンシーラーを眉毛に直接つけないように注意してください。あくまで補正するのは「眉の外側の肌」です。このひと手間で、まるでプロが仕上げたかのような、完璧なフレームの美眉が手に入ります。
8. ハイライトで立体感を出す
コンシーラーで輪郭を整えたら、いよいよ最後の画竜点睛。眉に光を与え、顔全体の立体感を演出する「ハイライト」の出番です。このステップは、眉そのものを美しく見せるだけでなく、目元を明るくし、彫りの深い印象を与える効果があります。
光と影を操ることで、顔はより立体的に見えます。コンシーラーで眉下の肌という「影」を整えた後、さらに光を集めるハイライトを乗せることで、眉骨の高さを際立たせ、目元に劇的なメリハリを生み出すのです。
ハイライトを入れる場所は、ただ一つ。「眉山の下の、眉骨が最も高くなっている部分」です。
ここにハイライトを入れることで、
・眉のアーチがより強調され、美しく見える
・目元がパッと明るく、リフトアップした印象になる
・顔全体の骨格が際立ち、立体感が生まれる
・目と眉の距離が近づいて見え、目力がアップする
【使い方と注意点】
・選ぶべきは、ギラギラとした大粒のラメが入ったものではなく、パール感が繊細で、肌に溶け込むような自然なツヤ感の出るハイライトです。TPOによっては、パール感のないマットなアイシャドウのアイボリーカラーなどでも代用できます。ビジネスシーンなどではマットなもの、パーティーシーンでは少しパール感のあるもの、といった使い分けも素敵です。
・小さなブラシや指先に少量を取り、眉山の下に「点」で置くようなイメージで乗せ、周囲を優しくぼかします。
・広範囲に広げすぎると、まぶた全体が腫れぼったく見えてしまうことがあるので、あくまでポイント使いを意識してください。欲張らないことが成功の秘訣です。
また、あまり知られていないプロのテクニックとして、眉頭の真上、額に向かう部分にほんの少しだけハイライトを入れる方法もあります。これにより、鼻筋から額にかけてのTゾーンに繋がりが生まれ、より求心的な顔立ちに見せる効果が期待できます。
コンシーラーが「影」を整える役割だとしたら、ハイライトは「光」を与える役割。この光と影のコントラストが、あなたの眉をワンランク上の、芸術的な領域へと引き上げてくれる最後の秘訣です。

9. プロが実践する眉メイクの正しい順番
これまで解説してきた各ステップを、一つの流れとしてまとめてみましょう。これが、私が長年の経験を通じてたどり着いた、最も合理的で、最も美しい仕上がりを約束する「プロの眉メイクプロセス」です。各工程が、次の工程のために最高のバトンを渡していく、完璧なリレーをイメージしてください。
1. 【準備】スキンケアと油分オフ
理由:メイクの密着度と持続性を最大限に高めるため。油分という最大の敵を取り除く土台作りの工程。
2. 【ベース】ベースメイク
理由:ペンシルが最も綺麗に発色する、適度な湿度のあるキャンバスを作るため。
3. 【分析】スクリューブラシ
理由:描くべき場所と活かすべき場所を見極めるため。設計図を描く前の測量作業。
4. 【骨格】アイブロウペンシル
理由:眉の基本構造と、最も消えやすい眉尻を確定させるため。家の基礎と柱を建てる工程。
5. 【色彩】アイブロウパウダー
理由:ペンシルの線をぼかし、自然な立体感と柔らかさを与えるため。壁を塗り、内装を施す工程。
6. 【立体化】アイブロウマスカラ
理由:眉毛そのものに色と毛流れを与え、平面的な絵を立体的なパーツに変えるため。
7. 【補正】コンシーラー
理由:輪郭のノイズを消し、デザインの完成度を極限まで高めるため。絵画を額縁に収める工程。
8. 【光彩】ハイライト
理由:光を集めて骨格を際立たせ、顔全体に立体感を与えるため。作品にスポットライトを当てる最終演出。
この順番でメイクを進めることで、各アイテムが互いの邪魔をせず、それぞれの役割を最大限に発揮してくれます。この流れこそが、薄い眉、濃い眉、左右非対称な眉など、あらゆるタイプの眉に応用できる、普遍的かつ最強のプロセスなのです。
10. 順番を変えるだけで仕上がりが劇的に変わる
これまで、美眉を叶えるための正しいプロセスを一つひとつ詳しく解説してきました。もしかしたら、「毎日こんなにできない…」と感じた方もいるかもしれません。しかし、なぜ私たちがこれほどまでに「順番」にこだわるのか。それは、順番を変えるだけで、同じ化粧品を使っているとは思えないほど、仕上がりに劇的な差が生まれるからです。
考えてみてください。
もし、パウダーを先に使ってしまったら?
ふんわりとしたパウダーの上からでは、ペンシルは滑ってしまい、シャープな眉尻を描くことはできません。まるで、砂の上に線を引こうとするようなものです。
もし、眉マスカラを最初に使ってしまったら?
マスカラで固まった眉毛の上からは、パウダーはムラになり、ペンシルはダマになってしまいます。美しい毛流れを作るどころか、不自然な束感が生まれるだけです。
もし、油分オフを怠ってしまったら?
どんなに完璧な順番で描いたとしても、その土台が滑りやすければ、全ての努力は数時間後には崩れ去ってしまいます。
眉メイクの各ステップは、それぞれが独立しているようで、実は前の工程を受け取り、次の工程へと繋げる「リレーのバトンパス」のような関係性で成り立っています。ペンシルが作った骨格というバトンをパウダーが受け取り、柔らかい肉付けをする。そして、最後にマスカラが立体感という名のゴールテープを切る。この流れがスムーズであるほど、仕上がりは美しく、そして崩れにくくなるのです。
もちろん、基本をマスターすれば「応用」も可能になります。
・応用例1:眉がほとんどない部分には
ファンデーションの前にリキッドアイブロウで薄く毛を描き込んでおき、パウダー等を重ねることで、より自然で消えにくい眉が作れます。
・応用例2:超ナチュラルメイクの日には
スクリューブラシで毛流れを整えた後、パウダーの一番明るい色をさっと乗せ、透明なアイブロウジェルで毛流れをキープするだけでも、清潔感のあるすっぴん風美眉が完成します。
あなたのメイクの順番は、あなたの「なりたい姿」を叶えるための戦略になっていますか?基本の順番は、あなたを裏切りません。まずはこの王道のプロセスを信じて、あなたの眉メイクを一度見直してみてください。きっと、鏡の前に立つのがもっと楽しくなるはずです。

究極のプロセスは、あなただけの美しさを引き出すために
眉メイクの正しい順番を知ることは、単にテクニックを学ぶこと以上の意味を持ちます。それは、あなた自身の顔と向き合い、自分だけの美しさを見つけ出すための、最も確かな羅針盤を手に入れるということです。
これまで「なんとなく」で済ませていた一つひとつの工程に、明確な「意図」を持つこと。なぜ、今、ペンシルを持つのか。なぜ、ここにパウダーを乗せるのか。その理由を理解した時、あなたの眉メイクは単なる作業から、自分を慈しみ、美しさを創造する、豊かな時間へと変わるはずです。
もちろん、毎日全てのステップを完璧に行う必要はありません。時間がない日は、ペンシルとパウダーだけでも良いでしょう。しかし、基本となるこの「究極のプロセス」を知っているかどうかで、その仕上がりには雲泥の差が生まれます。この知識は、あなたの一生の財産となるはずです。
今日お伝えした順番は、美眉への地図です。この地図を手に、あなた自身の眉という名の冒険を楽しんでください。昨日より今日、今日より明日、あなたの眉が、そしてあなた自身が、もっと輝き始めることを、心から願っています。