「どんなに時間をかけて眉を描いても、なぜかノッペリと平面的な印象になってしまう」
「雑誌のモデルのような、ふんわりとしていて彫りが深く見える眉はどうすれば描けるのだろう」
——そう悩んでいる方は少なくないはずです。
眉毛のメイクは、顔全体の印象を決定づける重要な要素でありながら、その「立体感」の表現は、単に色を塗る作業とは一線を画す、高度な技術が求められます。
実際、多くの人が眉を描く際に陥る最大の誤りは、眉を「輪郭と中を塗りつぶす二次元のパターン」として捉えてしまう点にあります。
私が長年、美容とデッサンの技術指導に携わってきた中で導き出した結論は、「立体的な眉は、メイクではなくデッサンの思考で描かれる」ということです。
眉毛を構成する一本一本の毛流れ、そして眉骨という骨格。
これらを光と影の原理に基づいて表現する技術こそが、平坦な顔立ちに奥行きを生み出す魔法となります。
ここでは、美術デッサンにおける確かな原則に基づきながら、プロの現場で実際に使用されている「光と影」「線と強弱」をコントロールする具体的なテクニックを、徹底的に解説します。
あなたの眉メイクを、今日から「描く」から「立体を構築する」フェーズへと進化させましょう。
1. 線だけで眉毛の丸みを出す方法
デッサンでは、立体を表現する際に「明暗」だけでなく、「線」の方向と強弱が極めて重要な役割を果たします。
特に眉毛は、一本一本の毛が密集して「塊(かたまり)」を形成しているため、その丸み(円柱状のカーブ)を線だけで表現するには、高度な視覚操作が必要です。
多くの人が眉を描く際、毛の方向を統一して描いてしまいがちです。
しかし、これが眉を平坦に見せてしまう最大の原因です。
なぜなら、人間の眉毛は、ただ真っすぐ上や横に生えているわけではなく、眉頭から眉尻にかけて、生える角度が複雑に変化しているからです。
線だけで丸みを出すために、意識すべきテクニックは「クロスの視覚効果」です。
眉の全体像を一つの面として捉えるのではなく、以下の3つのブロックに分割します。
- 眉頭ブロック:毛がほぼ垂直(上向き)に生えている部分。
- 眉中央(眉山手前)ブロック:毛が斜め上向きに流れている部分。
- 眉尻ブロック:毛が斜め下向きに流れている部分。
このブロックごとに、描く線の角度をわずかに変えることで、それぞれの毛が立体を構成しているような錯覚を生みます。
さらに、このテクニックを深めるのが「線の交差(クロスハッチング)」の概念です。
デッサンでは、立体を強調するために、一本の線に対して斜めに交差する線を重ねてトーンを乗せます。
これを眉に応用するのです。
例えば、眉の下縁(下のライン)は毛を上向きに描き、その上の毛を斜め下向きに描くことで、毛が重なり合って自然な影を生み出し、丸みが強調されます。
重要なのは、描く線を「毛を一本足す」という意識ではなく、「立体を構成するトーンを重ねる」という意識に切り替えることです。
線が均一すぎると、それは図面上の線になってしまい、立体感は生まれません。
線に強弱と、わずかな交差の視覚効果を加えることで、初めて毛の集積としての丸みが表現されます。
この「線の方向制御」こそが、デッサン技術の基本であり、立体的美眉を創造する最初のステップです。
立体感を出すための「線」の原則
| 原則 | デッサンにおける役割 | 眉メイクへの応用 |
| 線の方向の多様性 | 面の起伏(丸み)を表現 | ブロックごとに毛の角度を微調整し、 毛が重なり合うように描く |
| 線の強弱(筆圧) | 濃淡(光と影)を表現 | 眉の中心は強く、 エッジ(輪郭)付近は弱く描く |
| 線の交差(クロスハッチング) | トーン(影)の深さを表現 | 毛流れの異なる線を描き重ねて、 自然な影色を演出する |
関連記事はこちら:眉メイクの順番、本当にそれで合ってる?美眉を叶える正しいプロセス
2. 光と影を意識した描き方
デッサン技術において、立体を表現する最も重要な要素は「光と影」です。
眉毛を平面的に描いてしまう人の多くは、眉全体を均一なトーンで塗りつぶそうとします。
しかし、実際の人間の顔の眉骨は、眼球の上のカーブに沿って前方に突き出た、一種の「円柱」に近い構造を持っています。
この円柱構造があるからこそ、光の当たり方によって自然な立体感が生まれるのです。
この原理を眉メイクに応用することが、立体感を出すための核となります。
まず、デッサンで物体を観察する際、意識するのは以下の4つの要素です。
- ハイライト(光の当たる最も明るい点):多くの場合、眉の上部の最も出っ張った部分。
- 明部(光が当たる部分):眉の上側全体。
- 暗部(影になる部分):眉の下側(特に眉山の下から眉尻にかけて)。
- 落ち影(物体が地面に落とす影):眉毛が肌に落とす影。
この中で、メイクで最もコントロールすべきは「暗部」です。
眉毛の下面(眉骨の下のくぼみ)こそが、デッサンでいう「シェード(影)」が最も濃くなる部分だからです。
この暗部をアイブロウパウダーやペンシルで丁寧に、しかし過剰になりすぎないように色を乗せることで、眉全体が前に押し出されて見え、彫りが深く、立体的に見えます。
私の指導経験では、「眉を描くときは、眉の上半分は薄く、下半分を濃く」と伝えるだけで、受講生の眉の立体感が劇的に向上することが多々あります。
具体的には、眉の上側は毛の隙間を埋める程度の薄いパウダーのみに留め、眉の輪郭(エッジ)を曖昧にすることが重要です。
一方、眉の下側は、アウトラインを少しシャープに描いた後、その内側を埋めるように濃い色を乗せます。
これにより、上部が光を反射しているように見え(ハイライト効果)、下部が影になっているように見えるため、眉が顔の面から浮き出て見えるのです。
この「光と影のコントラスト」こそが、平面的なメイクから脱却し、奥行きを生み出すための、デッサンに基づく本質的なアプローチです。
光と影による立体表現の比較
| 眉の部位 | デッサン上の役割 | メイクでの実践法 | 使用ツールの推奨 |
| 眉の上縁 | 明部 (光が当たる面) | 色を乗せるのは最低限に抑え、 輪郭をぼかす | ブラシで薄いパウダーを ふんわり乗せる |
| 眉の下縁 | 暗部 (影になる面) | 濃いめの色で 最もシャープに描く | ペンシルまたは細筆で 濃いパウダーを使用 |

3. 毛の密集度で濃淡を調整する
デッサンにおいて、トーン(濃淡)を乗せる手法はいくつかありますが、眉の表現においては「線による密度の調整」が最も自然で効果的です。
単に濃い色を塗ってしまうと、それは「絵の具を塗った」ような人工的な見た目になってしまい、毛が密集して生えているという生命感のある立体感が失われてしまいます。
私たちが目指すのは、あくまで「本物の毛が集積してできた塊」としての自然な濃淡です。
この「毛の密集度による濃淡調整」をメイクで再現するには、主に以下の二つのステップが必要です。
- ベーストーン(薄い影)を作る:まず、眉全体にミディアムトーンのアイブロウパウダーを、大きなブラシでふんわりと乗せます。
これは、デッサンでいう「全体に薄い鉛筆のトーンをかける」作業に相当し、眉毛の存在感を際立たせる土台となります。 - ディテール(密集)で濃さを調整する:次に、ペンシルや細いブラシを使い、毛が薄い部分や、立体感を際立たせたい「暗部」に、一本一本の毛を表現する短い線を描き加えます。
線と線の間隔を狭くすることで、その部分の「毛の密集度」が高まり、結果的に濃く見えるのです。
この手法の最大の利点は、色材(コスメ)の濃さに頼るのではなく、線の物理的な密度に頼るため、濃くなっても人工的な「塗りつぶした感」が出にくい点にあります。
例えば、眉山の下側を濃く見せたい場合、濃いパウダーを一気に乗せるのではなく、ベースのパウダーの上から、短いペンシルラインを細かく重ねていくことで、あたかもそこに毛が密集しているかのような錯覚を生み出します。
この手法は、自眉が薄い方が「毛量があるように見せたい」場合にも非常に有効な、デッサン的なアプローチです。
特に意識すべきは、眉の濃淡は単調なグラデーションではないということです。
自眉が元々濃い部分と、薄い部分のコントラストを利用し、「濃い部分はさらに濃く」、「薄い部分は背景の影として機能させる」というメリハリをつけることが、立体感の源泉となります。
このディテールへのこだわりこそが、プロのテクニックと一般のメイクを分ける境界線と言えるでしょう。
濃淡調整のためのツールと役割分担
| ツール | デッサン上の役割 | 眉メイクでの使用箇所 | 線の性質 |
| アイブロウパウダー (大ブラシ) | ベースの薄いトーン (全体の影色) | 眉全体、 眉頭のぼかし | 柔らかい、 不鮮明な線 |
| アイブロウペンシル (細筆) | ディテール、 密度の強調 | 毛が薄い部分、 暗部(眉下) | 硬い、 鮮明な一本線 |
4. 眉頭から眉尻へのグラデーション
人間の顔は、鼻筋を起点として、額から頬にかけて緩やかなカーブを描いています。
そのため、最も鼻に近い眉頭は顔の面の中でも最も奥に位置し、眉山に向かって手前に張り出し、眉尻で再び奥に収束するような立体構造になっています。
デッサンにおける「空気遠近法」の概念を応用すれば、遠くにあるものほど色は薄く、近くにあるものほど色は濃く見えるのが自然な表現です。
この原理をそのまま眉に応用したのが、「眉頭薄く、眉山濃く、眉尻中間」のグラデーションの原則です。
このグラデーションの目的は、単に「自然に見せる」ことだけではありません。
その真の目的は、顔の中心(眉頭)を奥に、眉の最も高い位置(眉山)を手前に見せることで、顔全体に彫りの深さ(奥行き)を錯覚させることにあります。
眉頭を濃く描いてしまうと、顔の中心が膨張して見え、せっかくのデッサンによる立体感が台無しになってしまうのです。
私の経験上、デッサンを意識した眉メイクでは、眉頭は肌のトーンよりもワントーン明るいパウダーで、ほとんど色を乗せない状態からスタートするのが最も安全です。
具体的な濃さの比率を意識することが、均一なグラデーションを防ぐ鍵となります。
理想的なグラデーションの濃さの比率(トーンの強さ)は、「眉頭:2、眉山:7、眉尻:5」程度です。
眉頭は、毛流れに沿ってペンシルで一本一本の毛を数本描き足す程度に留め、それ以外のパウダーはブラシに残ったものを利用するだけで十分です。
眉山は、色を最も濃く乗せる部分ですが、濃すぎるパウダーで一気に塗りつぶすのではなく、ベースのパウダーの上に、暗部の線を重ねて「密集度を上げる」ことで濃さを出すべきです。
そして、最もテクニックが必要なのは、眉頭の「ぼかし」です。
ぼかしの線は、必ず毛の生えている方向(上向きか斜め上向き)に従い、筆圧を限りなく弱くして、短い線をシュッシュッと描き足すことです。
この短い線の集合体が、眉頭の毛が自然に立ち上がっているような、軽やかで立体的な印象を生み出すのです。
グラデーションによる奥行き表現の比率
| 部位 | 濃さの目安 (トーン比率:10段階) | デッサン上の役割 | 主な描画方法 |
| 眉頭 | 2 | 後退色 (奥に引かせる) | ブラシに残った色、 短い立ち上がり線 |
| 眉中央〜眉山 | 7 | 強調色 (手前に出す) | パウダー+ペンシルで 密度を上げる |
| 眉尻 | 5 | 収束 (形を整える) | 細い線でアウトラインを整え、 内側を埋める |
関連記事はこちら:アイブロウデッサンで学ぶ!顔の黄金比と理想の眉の描き方
5. 眉下と眉上のアウトラインの取り方
アウトライン(輪郭線)の処理は、眉の立体感と清潔感を両立させる上で、最も繊細な技術が要求される工程です。
デッサンにおける輪郭線は、物体の形を定義するものですが、眉メイクにおいては、その線が「線として見えてしまう」と、一気に人工的で平面的な印象を与えてしまいます。
プロのアイブロウアーティストが描く眉は、輪郭が完璧に整っているにもかかわらず、どこにも明確な「線」が見えません。
これが、デッサン思考の応用であり、「輪郭は線の集合体で表現する」という原則です。
ここでは、眉の上側の輪郭(眉上)と下側の輪郭(眉下)を、異なるアプローチで描くことが極めて重要です。
- 眉下のアウトライン:このラインは、眉骨の最も手前に突き出たライン、つまり立体を支える基盤となる部分です。
そのため、他の部分よりもシャープに、かつ最も濃く描く必要があります。
細いペンシルや筆を使い、一気に引くのではなく、短い線を繋げるように慎重に描きます。
このシャープさが、眉全体の引き締め効果と立体感の基盤となります。 - 眉上のアウトライン:このラインは、光が最も当たる「明部」の境界線です。
デッサンでは、光が当たる部分の輪郭は光でぼやけて見えるのが自然です。
したがって、眉上のアウトラインは、パウダーでぼかしながら描くか、そもそも色を乗せず、生えている毛の集合体をもってアウトラインと見なすべきです。
ペンシルで強く線を引くと、途端に眉が重く、平面的に見えてしまうので注意が必要です。
眉上をぼかし、眉下をシャープに描くことで、視覚的には「眉下が軸となり、眉全体が顔から持ち上がって見える」という効果が生まれます。
これをデッサン用語で言えば、「エッジの硬さ(シャープさ)と柔らかさ(ぼかし)のコントラスト」による立体表現です。
このコントラストなくして、奥行きのある洗練された眉は完成しないと言っても過言ではありません。
私自身、生徒さんに「眉下はペンシル、眉上はスクリューブラシ」と教えることで、アウトラインの硬さの使い分けを体得してもらっています。
アウトラインの描き方による立体感の違い
| アウトライン | デッサン上の役割 | 推奨される線の性質 | 結果として生まれる効果 |
| 眉下 | 構造の定義、暗部の強調 | シャープな線 (硬いエッジ) | 眉全体がリフトアップし、 締まって見える |
| 眉上 | 光の当たる明部の境界線 | ぼかした線 (柔らかいエッジ) | 肌と馴染み、 自然なふんわり感を強調する |

6. ハイライトとシャドウをデッサンで表現
立体感を決定づける最後の仕上げは、眉毛そのものではなく、その周囲の骨格(眉骨、鼻筋)を強調することです。
これは、デッサンでいう「環境光」や「反射光」を意図的に描き込む作業に相当します。
眉メイクにおけるハイライトとシャドウ(ノーズシャドウ)の役割は、単なる「明るく」「暗く」ではなく、眉という立体を際立たせるための「補助的な光と影」を生み出すことにあります。
まず、ハイライトです。
デッサンでは、最も明るいハイライトを置くことで、物体の質感を際立たせ、その部分を最も手前に引き出します。
眉メイクでは、ハイライトを入れるべき場所は主に「眉下の眉山から眉尻にかけての骨の上」です。
ここに入れることで、眉骨が突出して見え、同時に眉下の暗部(影)が強調されるため、眉全体が顔からより浮き出て見える効果が生まれます。
使用する色は、マット(ツヤなし)なアイボリー系か、ごく微細なパールが入った肌馴染みの良い色が最適です。
過剰なラメや白すぎるハイライトは、立体感よりも人工的なツヤが目立ってしまうため避けるべきです。
次に、シャドウ(ノーズシャドウ)です。
シャドウは、眉頭と鼻筋の付け根(目頭の横)のくぼみに入れるのが基本です。
この影は、眉頭が「奥に存在する」ことを錯覚させるための重要な要素です。
デッサンでは、影は必ず光の反対側にできます。
このシャドウを眉頭の毛流れと連動させて入れることで、眉頭から鼻筋にかけての「彫り」が一気に深くなり、顔全体の立体感が向上します。
使用するシャドウの色は、肌のトーンよりもワントーン暗い、赤みや黄みの少ないグレーがかったブラウンが最適です。
大切なのは、ハイライトもシャドウも、肌に溶け込ませるようにぼかすことです。
デッサンでトーンを乗せた後、指や擦筆で馴染ませるように、これらのパウダーを大きなブラシで優しく、境界線が完全に消えるまでぼかしてください。
この「ぼかし」の工程こそが、メイクの線を「自然な影」へと昇華させ、立体感を現実のものにする魔法なのです。
ハイライトとシャドウの色と効果
| 名称 | デッサン上の役割 | 最適な使用色 | 効果 |
| ハイライト | 反射光、 立体を前に押し出す | マットなアイボリー、 微細パール入りのベージュ | 眉骨を強調し、 眉全体をリフトアップして見せる |
| ノーズシャドウ | 落ち影、 距離感(奥に引かせる) | 赤みや黄みの少ない グレーブラウン | 眉頭を奥に引き、 鼻筋の彫りを深く見せる |
参考:【初心者向け】アイブロウデッサンの道具と基本の描き方ステップバイステップ
7. 眉毛の毛流れ一本一本の強弱
一本の線にも、生命感を込めるのがデッサンです。
均一な筆圧で描かれた線は、冷たく、無機質な印象を与えます。
それに対し、筆圧が変化する線は、「根元から生え、毛先で消える」という毛の自然な生命現象を表現できます。
これは、眉毛を描く際に必須となる、デッサンにおける線の強弱(タメと抜き)のテクニックです。
毛一本一本の強弱を表現することで得られる最大のメリットは、「毛の質感」と「透明感」です。
本物の毛は、根元が最も太く、色素が濃く、そして先端に向かって細く、透明になっていきます。
これをアイブロウペンシルやリキッドで再現するためには、以下の筆圧コントロールが欠かせません。
- 描画の開始(根元):ペン先を肌に置く瞬間、筆圧をわずかに強めます。
これにより、毛の根元がしっかりとした太さと濃さで表現されます(タメ)。 - 描画の終了(毛先):毛先に向かってペン先を素早く持ち上げながら引きます。
この「抜き」の動作により、毛先が自然に細くフェードアウトし、透明感を帯びた仕上がりになります。
この技術は、特に眉頭や眉尻など、自眉が薄く、一本一本を描き足す部分で絶大な効果を発揮します。
均一な線で描くと、それはまるで「印字された」ような不自然な線になり、すぐにメイクと見破られてしまいます。
しかし、筆圧をコントロールした線は、人間の目には「本物の毛」の錯覚を与え、それが積層することで眉全体が非常にリアルで立体的に見えるのです。
私自身、リキッドアイブロウで毛を描き足す際、必ず指先に力を入れすぎず、まるで筆が肌の上を踊るようなイメージで描くことを意識しています。
この軽やかなタッチこそが、「強さの中に柔らかさ」を表現し、眉毛に自然な立体感と動きを生み出す秘訣なのです。
もし、あなたの描く線が硬く、のっぺりしていると感じたら、描くスピードを上げ、毛先で「スッ」と力を抜く練習を繰り返してみてください。
| 線の部位 | 筆圧のコントロール | 表現される毛の質感 |
| 描画の開始 (毛の根元) | 力を「タメる」 (強く、太く) | 安定感、生命力、密度 |
| 描画の終了 (毛先) | 力を「抜く」 (細く、薄く) | 透明感、繊細さ、自然な収束 |
関連記事:リキッドアイブロウを使いこなす!1本1本描いたようなリアル眉の作り方
8. 立体感を出すための鉛筆の持ち方
デッサンにおいて、鉛筆の持ち方は描画される線の性質を決定づける根幹です。
アイブロウメイクにおいても、ペンシルやブラシの持ち方一つで、生まれる線の硬さ、濃さ、そして適用できる範囲が劇的に変わります。
立体感のある眉を描くためには、「細部を描く持ち方」と「トーンを乗せる持ち方」を意識的に使い分ける必要があります。
一般的に、私たちは文字を書くときと同じようにペンシルを短く握り、ペン先を立てて描きます。
これは、デッサンでいう「細密描写」に適した持ち方であり、シャープで濃い線(「タメ」の線)を描くのに最適です。
この持ち方は、眉下の輪郭や、毛が薄い部分に一本一本毛を描き足すディテール作業に使うべきです。
しかし、この持ち方だけで眉全体を塗りつぶすと、色が均一になりすぎて立体感が失われます。
ここで必要となるのが、デッサンで大きな面や影を描くときに用いる「トーンを乗せる持ち方」です。
具体的な方法は以下の通りです。
- ペンシルを寝かせる:鉛筆(ペンシル)の先から約3〜4cm離れた部分を、親指と人差し指で軽く持ちます。
ペンシルを肌に対してほぼ水平(10〜20度程度)に寝かせます。 - 手の甲で描く:この状態で、手の甲全体を使って、広い範囲に均一で柔らかいトーンを乗せます。
筆圧が弱くなり、描かれる線も細く薄く、柔らかいものになります。
この寝かせた持ち方は、主に眉全体へのベースのパウダー乗せや、眉上の輪郭をぼかす作業に適しています。
筆先ではなく、筆や芯の側面全体を使うことで、均一な濃さを広い面に柔らかく乗せることができ、これが自然な影(トーン)の表現に繋がります。
プロの現場では、同じコスメを使っていても、持ち方や筆圧を変えるだけで、描けるトーンの幅を何段階も広げています。
あなたの眉メイクが平面に見える原因の一つは、もしかしたら「持ち方」が単一であることかもしれません。
持ち方による描線の性質の違い
| 持ち方/姿勢 | 筆(芯)の角度 | 描かれる線の性質 | 眉メイクでの用途 |
| 文字書き (立てる) | 約45〜60度 (立てる) | 硬い、 濃い、 鮮明なディテール線 | 毛の描き足し、 眉下の輪郭、 眉尻の仕上げ |
| トーン (寝かせる) | 約10〜20度 (寝かせる) | 柔らかい、 薄い、 均一なトーン | パウダーのベース乗せ、 眉上のぼかし、 ノーズシャドウ |

9. デッサンが上手くなるための観察眼
デッサン指導の現場でよく言われるのは、「描く技術の9割は、見る技術である」という言葉です。
眉メイクの立体感を向上させるために、テクニックを磨くことももちろん大切ですが、その前提として「立体をどう見ているか」という観察眼を養うことが、結果的に最も近道となります。
私たちが鏡で自分の顔を見たとき、多くの場合、「こうありたい」という理想や、「ここの毛が足りない」という欠点にばかり目が行きがちで、客観的に「光と影」や「骨格の構造」を捉えられていません。
観察眼を養うための具体的な訓練方法を提案します。
- 「線」ではなく「塊(かたまり)」として捉える:自分の眉毛を、一本一本の線ではなく、「毛の生えた円柱形の塊」として見てください。
そして、「光が最も強く当たっている面(明部)」と「影になっている面(暗部)」がどこにあるかを特定する訓練をします。
これにより、先ほど解説した「眉の上は明るく、下は暗く」という原理が、頭ではなく視覚で理解できるようになります。 - 色彩を排除して観察する:スマホのカメラで自分の顔を撮影し、その画像を「モノクロ(白黒)」に変換してみてください。
色彩がなくなると、濃淡(トーン)の差だけが強調されます。
自分の眉のどこが濃すぎ、どこが薄すぎるのか、客観的なコントラストの違いが浮き彫りになります。
これにより、眉頭の濃さや、眉全体のグラデーションが適切かどうかを、感覚ではなく論理的にチェックできます。 - 第三者の目線でチェックする:眉を描き終わった後、鏡に顔を近づけてチェックするのではなく、鏡から2メートルほど離れて全身を映してみてください。
眉は、顔全体の中で機能するパーツであり、遠目から見たときのバランスと立体感が最も重要です。
また、友人や家族の眉毛を「デッサンとして」観察し、彼らの眉の明暗を分析する練習も効果的です。
この観察眼こそが、あなたのメイクを「ただの化粧」から「立体芸術」へと昇華させる唯一の力となります。
描く技術が頭打ちになったと感じたときは、必ず、描くのを止めて「見る」訓練に時間を割いてください。
本質的なデッサン技術の向上は、ここから始まります。
10. 面から奥行きを生み出すための最終原則
「アイブロウデッサン」の技術とは、すなわち、顔の立体構造を理解し、光と影を巧みに操作することで、平面的な顔に奥行きを生み出す視覚効果の技術です。
この一連の解説を通じて、単に「流行りの形」を描くのではなく、「眉骨という立体を際立たせるための影を、いかに自然に作り出すか」という本質的な考え方を共有させていただきました。
この記事で最も強調したかった結論は、立体感は「濃さ」ではなく、「濃淡のコントラスト」と「線の方向」によって生まれるということです。
特に、眉の下側(暗部)をシャープに描き込み、眉の上側(明部)をふんわりとぼかすというデッサン的なアプローチが、平坦な眉を劇的に変化させる鍵となります。
今日から実践できる具体的なアクション
- 鉛筆の「持ち方」を変える訓練を今日から試してください。
眉下や毛の足りない部分を描くときは、ペンシルを立てて描き、ベースのパウダーや眉上をぼかすときは、ペンシルやブラシを寝かせた持ち方に変える。
この使い分けを意識するだけで、描かれる線の性質が変わり、無意識に眉に立体的なトーンの差が生まれます。 - 毎日、眉を描く前に「モノクロ観察」を数秒間実行してください。
自分の眉をスマホで撮り、白黒に変換してトーンバランスをチェックする習慣を持つことで、眉頭が濃すぎないか、眉山の影が足りているかなど、客観的な「デッサンミス」を修正する能力が飛躍的に向上します。
立体的な眉は、特別なセンスで描かれるものではありません。
それは、光と影の原則という、論理的で分かりやすいルールに基づいて構築されます。
今日から、あなたの眉メイクを、単なる「着色」から「構造の表現」へと進化させ、顔全体に洗練された奥行きを生み出してください。
あなたのメイクに対する意識が変わり、結果が必ずついてくるはずです。